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名古屋地方裁判所 平成2年(ワ)647号 判決 1993年12月22日

豊明市三崎町社八番地の三

原告

植松義則

名古屋市南区弥次ヱ町二丁目一九番地の一

原告

植松工業株式会社

右代表者代表取締役

植松義則

右両名訴訟代理人弁護士

野田弘明

右訴訟復代理人弁護士

竹内裕詞

右輔佐人弁理士

西山聞一

東大阪市横小路町五丁目三番四一号

被告

株式会社イチグチ

右代表者代表取締役

市口裕一

右訴訟代理人弁護士

中嶋邦明

同右

柳村幸宏

同右

増田勝久

同右

松田成治

同右

八代紀彦

同右

佐伯照道

同右

西垣立也

同右

山口孝司

同右

天野勝介

同右

中島健仁

同右

森本宏

同右

石橋伸子

同右

内藤秀文

右輔佐人弁理士

鎌田文二

同右

東尾正博

同右

鳥居和久

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  申立て

一  被告は、別紙イ号、ロ号、ハ号、ニ号、ホ号、ヘ号及びト号各物件目録記載の研摩布紙ホイールを、製造し、販売し又は販売のため展示してはならない。

二  被告は、その本店、営業所及び工場に存する前項記載の各物件並びにその半製品及び仕掛品を廃棄し、かつ、前項記載の各物件の製造設備を除却せよ。

三  被告は、原告植松義則に対し四八〇〇万円及び原告植松工業株式会社に対し三〇〇万円並びに右各金員に対する平成二年三月一四日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

四  仮執行宣言

第二  事案の概要

本件は、被告による研摩布紙ホイールの製造販売行為につき、原告植松義則(以下「原告植松」という。)が意匠権及び実用新案権に基づき、並びに原告植松工業株式会社(以下「原告会社」という。)が意匠権及び実用新案権の専用実施権に基づき、それぞれ、被告に対し、製造販売の差止め等及び損害賠償(一部請求)を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  意匠権

(一) 原告植松は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)の権利者である(甲三)。

意匠に係る物品 研摩布紙ホイール

出願日 昭和五七年五月二四日

登録日 昭和六一年一二月二三日

登録番号 第七〇一八九八号

登録意匠の内容 本判決添付の意匠公報(以下「本件意匠公報」という。)記載のとおり

(二) 原告会社は、本件意匠権につき、次の専用実施権を有する(甲三)。

登録日 平成元年一二月一八日

範囲 地域 日本全国

期間 本件意匠権の存続期間満了まで

内容 製造、使用、譲渡

2  実用新案権

(一) 原告植松は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している(甲四)。

考案の名称 研摩布紙ホイール

出願日 昭和五七年五月一四日

出願公開日 昭和五八年一一月一九日

出願公告日 昭和六三年二月五日

登録日 昭和六三年一〇月一一日

登録番号 第一七四五一七三号

(二) 原告会社は、本件実用新案権につき、次の専用実施権を有する(甲四)。

登録日 平成元年一二月一八日

範囲 地域 日本全国

期間 本件実用新案権の存続期間満了まで

内容 製造、使用、譲渡

(三) 本件考案の実用新案登録請求の範囲は、本判決添付の実用新案公報(以下「本件実用新案公報」という。)の該当欄に記載のとおりである。

(四) 本件考案の構成要件を分説すれば、次のとおりである。

A 多数の矩形状研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成された環状研摩体3

B 環状研摩体3の外周縁側を残した内端面3bに、ファイバー5を介在して軸孔2を有するホイール基盤1を接着剤によって一体結合してなる

C 研摩布紙ホイール

(五) 本件考案の作用効果は、次のとおりである(甲一)。

(1) ホイール基盤1に一体結合された環状研摩体3が、多数の矩形状研摩布紙片4をそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設させた構成としてあるから、各研摩布紙片4が隣接どうし傾斜状に重なり合って相互に補強し合って各研摩布紙片4自体の腰が強大となり、不均整な歪を生じたり、型崩れを生じたりせず、かつ、局部的に過度な摩耗を生ぜず長期にわたって安定使用でき寿命を著しく向上できると共に、研摩の際の押圧強度も均整で平滑な高精度の表面研摩が安定的に行える。

(2) 特にこの考案の特徴とするところは、環状研摩体3を構成している多数の各研摩布紙片4が、それぞれ適宜角度を傾斜して集束繞設され研摩面の砥粒が金属加工面に対して鋭角に当たるように構成された点で、このために研摩時に、傾斜状基材布紙に結合保持されている砥粒に作用する力は、そのベクトルが該砥粒を基材布紙に押え付ける働きをし、砥粒を保持している結合剤の力を助勢増大せしめ、鋭い刃先の自生を促し、常に安定した優れた研摩、研削能力及び研摩精度を発揮できると共に耐用寿命を著しく増大させることができる。

(3) 研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるため、研摩作業開始後、直ちに各研摩布紙片4ごとに砥粒が脱落した帯域がそれぞれ研摩面砥粒部に接して形成され、この砥粒脱落の布紙帯域が、砥粒と結合剤との間にある切り屑の逃げ場となる規模の大きい一種の気孔の役目を果たして切り屑を内外方に円滑に排出せしめるもので、従来の砥石や研摩ディスクのように切り屑の目づまり現象が生ぜず、加工物に熱をもたせない。

(4) 環状研摩体3も、個別の各研摩布紙片4が集束されてなるため、熱伝導による熱の伝わりが小さく放熱効果がよいもので、加工物ともども熱をもたないため、加工物の表面に研削焼けや研削割れなど目つぶれを生ぜしめない。

(5) ホイール基盤1は、環状研摩体3の外周縁側を残した内端面3bに、ファイバー5を介在して接着固定されており、ディスクグラインダーに着装して研摩作業を行う際、前記環状研摩体3の回転により、その外周縁側における各研摩布紙片4の各隣接空間部をそれぞれ通過する旋回空気流が誘起され、該空気流が被研摩金属表面を冷却して摩擦加熱を防止する。

(6) 環状研摩体3は、前記のように腰が強く研摩有効厚みが大であるから、その厚みがごく薄くなるまで長期にわたって安定使用できる。

(7) 環状研摩体3は、ファイバー5を介在して接着剤によってホイール基盤1に結合固定されているから、結合固定が極めて安定強固であると共に、ファイバー5が緩衝機能をもち、常に安定した均一な研摩を行わしめることができる。

3  被告の行為

被告は、別紙イ号、ロ号、ハ号、ニ号、ホ号、ヘ号及びト号各物件目録記載の研摩布紙ホイール(以下、それぞれを「イ号物件」のようにいい、合わせて「被告各物件」ともいう。)を、製造販売している(ただし、右各物件目録の説明文中の「1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。」とする部分については、争いがある。また、被告各物件の製造販売の期間についても、後記二3のとおり争いがある。)。

二  争点

1  被告各意匠は本件意匠に類似するか(争点1)

(一) 原告ら

(1) 本件意匠の範囲

本件意匠は、次の形状よりなる。

<1> 多数の矩形状研摩布紙片を円環状に重合することにより、表裏面に放射状のひだを表わすと共に、外周面に矩形状研摩布紙片の一辺がそれぞれ軸方向に対し約三〇度の傾斜線を表わした円環板状の研摩部の上部に、中心に軸孔を円状に表わした鍔付き截頭円錐台状のホイール基盤を研摩部より小径にして同心的に表わしている。

<2> 平面において、研摩部外径並びにホイール基盤における鍔径、截頭円錐台形の大径及び小径並びに軸孔が、その径比を概ね六対四・七対三対二対一として同心円状に表われ、ホイール基盤の鍔の周縁より研摩部のひだの輪郭線が放射状に表われている。

<3> 底面において、研摩部が円環状に表われ、その表面にはひだの輪郭線が放射状に表われ、その内輪の奥底に嵌合されたほぼ凹型円状の座板の中央が中心に表わした円状の軸孔と共に円状に陥没して円座を表わし、研摩部の外径及び内径、座板の外径、円座の外径並びに軸孔径の比を概ね六対四・七対三・一対一・八対一として同心的に表わしている。

<4> 研摩部の外径に対する研摩部とホイール基盤の高さ比を概ね一対〇・一六対〇・〇六七としている。

(2) 本件意匠の基本的構成態様

本件意匠の基本的構成態様は、

<1> 多数の研摩布紙片を傾斜して重ね合わせ、環状に配した研摩部に

<2> 右研摩部より小径で、中心に軸孔を有し、鍔付き截頭円錐台状(中央部が膨出した形状)の円形の基盤が結合している

点であり、右の点が看者の注意を最も惹くものである。しかも、このような構成の先行意匠はなく、まったく新規なものである。

(3) 本件意匠と被告各意匠との対比

<1> 本件意匠と被告各物件の意匠(以下、被告各物件の意匠につき、イ号物件の意匠を「イ号意匠」のようにいい、イ号意匠からト号意匠までを合わせて「被告各意匠」という。)との共通点は、次のとおりである。

イ 多数の矩形状研摩布紙片を円環状に重合することにより、表裏面に放射状のひだを表わすと共に、外周面に矩形状研摩布紙片の一片がそれぞれ軸方向に対し傾斜線(その角度は、イ号意匠においては約三〇度であって本件意匠と共通である。)を表わした円環板状の研摩部の上部に、中心に軸孔を円状に表わした鍔付き截頭円錐台状のホイール基盤を研摩部より小径にして同心的に表わしている。

ロ 平面において、研摩部の外径並びにホイール基盤における鍔径、截頭円錐台形の大径及び小径並びに軸孔が同心円状に表われ、ホイール基盤の鍔の周縁より研摩部のひだの輪郭線が放射状に表われている。

ハ 底面において、研摩部が円環状に表われ、その表面にはひだの輪郭線が放射状に表われ、その内輪の奥底には中心に円状の軸孔を表わしたほぼ凹型円状の座板が同心的に表われている。

<2> 右によれば、被告各意匠は本件意匠と基本的構成態様において共通しているところ、両者の相違点は、被告各意匠においては、研摩布紙片の枚数が比較的少なく(底面図)、そのため研摩部が比較的薄く、本件意匠は外周面において研摩布紙片の一辺がそれぞれ軸方向に対し、約三〇度の傾斜線を表わすのに対し、被告各意匠(イ号意匠を除く。)ではこれより小さく(ロ号及びハ号各意匠は約二〇度、ニ号意匠は約一八度並びにホ号、ヘ号及びト号各意匠は約一七度)であり(正面図等)、また、研摩部の周縁部の基盤からはみ出した度合が比較的小さいという程度(寸法)の差である。そして、右の差異については、その寸法の差は微差であり、かつ、研摩布紙ホイールにおいて、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み及び研摩部周縁部の基盤からのはみ出しの度合は、研摩布紙ホイールの性質、用途、使用形態などからしても質的な相違をもたらすものではないから、要部ではなく需要者にとって、右の相違点が独自の美感を生ずるものとは認識されない。

また、イ号、ロ号、ニ号、ホ号及びヘ号各意匠では、研摩部の上部にこれより小径な円盤を同心的に表わし、該円盤の上部に更にこれより小径なホイール基盤を同心的に表わしているが、右形状は、看者に本件意匠と異なる美感を印象づけるものではない。

<3> したがって、本件意匠と被告各意匠とを全体的に観察した場合、両者は、意匠の要部において構成態様を共通にし、美感を共通にするから、被告各意匠は本件意匠に類似する。

(二) 被告

(1) 本件意匠の構成態様

<1> 中心に軸孔を有する円形の基板と、多数枚の研摩布紙を重ね合わせて基板の下面の外周縁に沿って環状に配した研摩部とからなり、各研摩布紙を基板に対して傾斜させて環状の研摩部の下面に、各研摩布紙の下方縁を放射状の段差として表わしている。

<2> 基板と研摩部とは、基板の外径寸法が研摩部の外径寸法の約七八パーセント(すなわち、研摩部の外径寸法を一〇〇とした場合に基板の外径寸法は約七八)、研摩部の厚さが研摩部の外径寸法の約一七パーセントの寸法関係にあり、研摩布紙の枚数が一四〇枚である。

(2) 被告各意匠の構成態様

<1> 中心に軸孔を有する円形の基板と、多数枚の研摩布紙を重ね合わせて基板の下面の外周縁に沿って環状に配した研摩部とからなり、各研摩布紙を基板に対して傾斜させて環状の研摩部の下面に、各研摩布紙の下方縁を放射状の段差として表わしている。

<2> 基板と研摩部とは、基板の外径寸法が研摩部の外径寸法の約九五パーセントないし九六パーセント、研摩部の厚さが研摩部の外径寸法の約三パーセントないし七パーセントの寸法関係にあり、研摩布紙の枚数が七二枚又は九〇枚である。

(3) 本件意匠の要部

先行意匠の内容を考慮すれば、本件意匠の要部は、基板が小さいこと、研摩部の厚みが分厚いこと及び研摩布紙の枚数が多くて密に並べられていることによって、基板に、分厚くて、大きな重たい研摩部を取り付けたという印象を看者に与える点にある。

(4) 本件意匠と被告各意匠の類否

両者の構成態様のうち基本的構成態様(右(1)及び(2)の各<1>)は共通性を有するが、被告各意匠の研摩部は薄っぺらな感じで、本件意匠の研摩部のように分厚くて大きな印象を与えるものではない。また、研摩部を形成する研摩布紙の枚数も、被告各意匠では本件意匠よりも五〇枚以上も少なく、研摩部の下面に放射状の段差として現われる研摩布紙の幅も、本件意匠よりもかなり広くて各研摩布紙が密に並んだ感じがしない。

したがって、被告各意匠は、本件意匠の要部を備えておらず、本件意匠に類似しない。

2  被告各物件は、本件考案の技術的範囲に属するか(争点2)

(一) 原告ら

(1) 本件考案の構成要件Aにいう「接線方向」とは環状研摩体の円周方向を意味し、「繞設」とはめぐらして設ける、囲って設けるという意味である。また、「研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たる」ためには、研摩布紙の一枚一枚すべてを一定の角度で傾斜させることが不可欠である。

被告各物件においては、多数の矩形状研摩布紙片がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように環状研摩体が構成されているから、本件考案の構成要件Aを充足している。

(2) 本件考案の構成要件Bにいう「ファイバー」とは繊維を意味するところ、被告各物件は、各物件目録記載のとおり、ホイール基盤と環状研摩体を該ホイール基盤とほぼ同形のネット状の織布を介して接着剤にて接着固定したものであるから、本件考案の構成要件Bにいうファイバーを備えている。

(3) したがって、被告各物件は、本件考案の構成要件をすべて満たしているから、本件考案の技術的範囲に属する。

(二) 被告

(1) 構成要件Aにいう「多数の矩形状研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」との構成は技術的に甚だ難解であり、「接線方向」の用語の意味内容は判然としない。したがって、本件考案の内容は不明瞭であり、どのような係争対象物もその技術的範囲に属さないと解すべきである。

また、本件考案は、本件実用新案公報の記載によれば、環状研摩体を構成する研摩布紙片の配列密度を研摩体の内側と外側とで均一にするという技術的課題を解決することを目的とするものであるところ、右要件にいう「接線方向」を単に環状研摩体の円周方向を意味するものと解したのでは、このような目的を達成することはできない。したがって、右の要件を原告ら主張のように解することはできない。

しかも、被告各物件では、環状研摩体を構成する研摩布紙片の配列密度は、内側ほど大きく、外側ほど小さくなっており、本件考案の構成要件Aを充足せず、前記一2(五)(1)の作用効果を奏しない。

なお、イ号ないしト号各物件目録の説明文中の環状研摩体の構成に関する部分は、「1は重ね合わした多数の矩形状研摩布紙片2を環状に並べた環状研摩体であって、各矩形状研摩布紙片2は環状研摩体1の上下の面に対して一定の角度で傾斜している。」とすべきである。

(2) 被告各物件において、環状研摩体と基板との間に介在させているのは、ネット状の織布であってファイバーではない。研摩布紙の業界において、「ファイバー」という用語は、バルカナイズドファイバーという特定の材質を指す用語であり、「ファイバー」は研摩布紙の基材等として古くから使用されているものであって、ネット状の織布をファイバーということはない。また、被告各物件のネット状の織布には、基板と環状研摩体との間に設けられる柔らかくて弾力性を有する緩衝層としての機能はまったくないから、本件考案の「ファイバー」が有するとされる前記一2(五)(7)の作用効果を有しない。

したがって、被告各物件は、本件考案の構成要件Bを充足しない。

3  損害額(争点3)

(一) 原告ら

(1) 被告は、被告各物件を、昭和五八年九月ころから現在まで製造販売しているが、昭和六二年以降でも、合計毎月三〇〇〇万円以上の売上高を有している。

(2) その利益率は五パーセントを下らないから、昭和六二年三月三一日から平成二年二月二八日までの間に、五二五〇万円以上の利益を得たことになる。

(3) よって、被告に対し、原告植松は本件意匠権及び本件実用新案権の侵害に対する損害賠償として右(2)の一部として四八〇〇万円、並びに原告会社は本件意匠権及び本件実用新案権の専用実施権の侵害に対する損害賠償として右(2)の一部として三〇〇万円、並びに右各金員に対する不法行為の後である平成二年三月一四日から右支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 被告

右(一)(1)及び(2)の事実は否認する。

被告が、被告各物件を製造販売した期間は、イ号物件は昭和五八年九月から昭和六三年末まで、ロ号物件は昭和五九年から昭和六三年末まで、ハ号物件は昭和五八年一二月から昭和六三年末まで、ニ号物件は昭和五八年から昭和六三年末まで、ホ号物件は昭和六〇年から昭和六三年末まで、ヘ号物件は昭和六〇年の一年間のみ、ト号物件は昭和五八年七月から昭和五九年末までである。

第三  争点に対する判断

一  被告各意匠は、本件意匠に類似するか(争点1)

1  本件意匠の構成について

証拠(甲二、乙一ないし六、乙三六の一ないし五)及び弁論の全趣旨によれば、本件意匠は、次の形状よりなるものと認められる。

(一) 一四〇枚の研摩布紙片を傾斜させて重ね合わせることにより環状研摩体を構成し、その上部に、研摩体部分よりも小径であって、中心に軸孔を有し、中央部が円錐台形となっているホイール基盤を有する。

(二) 環状研摩体の部分は、外周面で各研摩布紙片の辺が底面に対して約三五度傾斜して規則的な模様を表わしており、環状研摩体の外径を一〇〇としたときの環状研摩体の高さは一六、ホイール基盤の高さは六・七である。

(三) 平面において、環状研摩体の外径、ホイール基盤の直径、中央の円錐台形部分の大径及び小径並びに軸孔の比は、概ね六対四・七対三対二対一であって、これらは同心円をなす。

(四) 底面において、環状研摩体の研摩布紙片の辺がそれぞれホイール基盤の軸孔のほぼ接線をなす位置にあり、ホイール基盤軸孔の外側には円形の座板があり、軸孔、座板並びに環状研摩体の内周及び外周が同心円をなす。

(五) 全体の印象は、ホイール基盤に比べて環状研摩体の部分が大きく、側面から見た場合には環状研摩体部分が分厚く(環状研摩体部分がホイール基盤部分の約二・四倍の高さを有する。)、平面から見た場合には環状研摩体部分がホイール基盤から少なからずはみ出しているという印象を与え(環状研摩体部分の直径の約二二パーセントがホイール基盤から外側にはみ出している。)、環状研摩体の側面及び底面において、多数の研摩布紙片の辺による規則的な模様が見られる点が特徴的である。

2  これに対し、証拠(乙七ないし一三の各一ないし三、検甲一ないし七)によれば、被告各意匠について、次のとおり認められる。

(一) 被告各意匠は、いずれも、研摩布紙片を傾斜させて重ね合わせることにより環状研摩体を構成し、その上部に、研摩体部分よりも小径であって、中心に軸孔を有し、中央部が円錐台形となっているホイール基盤を有する点で、本件意匠と共通である。

(二) しかし、被告各意匠の環状研摩体は、いずれも七二枚(イ号、ハ号、ニ号、ト号)又は九〇枚(ロ号、ホ号、ヘ号)の研摩布紙片からなり、本件意匠のそれと比較して研摩布紙片の枚数が少ないため、環状研摩体の部分が分厚くなく、ホイール基盤と同程度の厚みであり、また、その外周面で各研摩布紙片の辺が規則的な模様を表わしているが、その傾斜は底面に対して約一〇度ないし三〇度(イ号三〇度、ロ号二六度、ハ号一八度、ニ号一六度、ホ号・ヘ号一五度、ト号一〇度)である。

(三) 底面において研摩布紙片の辺が構成する模様も、研摩布紙片の枚数が少ないため配列のピッチが比較的大きい。

(四) また、平面図において、環状研摩体部分の直径のうちホイール基盤から外側にはみ出している部分の割合は、四パーセント(ハ号、ヘ号、ト号)又は五パーセント(イ号、ロ号、ニ号、ホ号)である。

3  右1及び2の判示を前提として検討するに、本件意匠は、多数の研摩布紙片からなる分厚い環状研摩体とこれに対して比較的小さいホイール基盤とによって構成されているのに対し、被告各意匠は、本件意匠の研摩布紙片のほぼ二分の一又は約六五パーセントの枚数の研摩布紙片と環状研摩体よりわずかに小径のホイール基盤とからなり、全体として薄いスリムな印象を与える。また、本件意匠の環状研摩体底面の研摩布紙片の辺がなす模様は、多数の線からなり「密」な印象を与えるのに対し、被告各意匠の底面のそれは、これと比較すると線の数が少なく、「疎」な印象を与える。

したがって、本件意匠と被告各意匠は視覚を通じての美感を異にするものと認められるから、被告各意匠はいずれも本件意匠に類似するものではないというべきである。

4  これに対し、原告らは、本件意匠の基本的構成態様は、<1> 多数の研摩布紙片を傾斜して重ね合わせ、環状に配した研摩部に、<2> 右研摩部より小径で、中心に軸孔を有し、鍔付き截頭円錐台状(中央部が膨出した形状)の円形の基盤が結合している点であり、この点で本件意匠と被告各意匠とは共通であり、かつ、研摩布紙ホイールにおいて、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み及び研摩部周縁部の基盤からのはみ出しの度合は、物品の性質、用途、使用形態などからしても質的な相違をもたらすものではないから、要部ではなく、需要者にとって、右の相違点が独自の美感を生ずるものではないと主張する。

(一) しかしながら、証拠(甲六、乙一六の二、乙二二、二三、三〇)によれば、ディスクグラインダーに装着して用いる研摩ホイール及び回転砥石において軸孔付近に円錐台形の突起を有するホイール基盤を有する意匠並びに研摩部の外径よりも小径のホイール基盤を有する研摩布紙ホイールの意匠は、いずれも本件意匠出願前に公知であったことを認めることができ(なお、一九七八年(昭和五三年)一〇月に西ドイツにおいて発行された雑誌中に記載されている研摩盤の写真(乙一六の二)によれば、その側面の形状は明らかではないものの、底面及び正面の形状からすれば、正面の「SCHLEIFMOP」なる表示のある部分がホイール基盤であって、その外側には研摩部分がはみ出しているものと認めることができ、側面の形状が明らかでないことは、右認定を妨げるものではない。)、これらの公知意匠を前提とすると、本件意匠のホイール基盤の形状あるいは研摩部がホイール基盤よりも大径に構成されている点に本件意匠の特徴があるということはできない。

(二) さらに、証拠(乙三六の三、四)によれば、原告植松は、特許庁審査官の拒絶理由通知に対し、昭和六一年六月二三日付けで意見書を提出したが、同意見書において、本件意匠は、環状研摩体の外周面がそれぞれ約四五度傾斜した多数の傾斜線によって形成されていて変化に富んだ幾何学的模様を有するという点に特徴があるものと主張し、ホイール基盤の形状及び環状研摩体との大きさの違いについては何ら触れなかったことが認められる。

(三) また、研摩部の構成についても、証拠(乙一五)によれば、「布紙からなる基材の表面に砥粒を接着して短冊状に裁断した多数の研摩布紙を、その砥粒面を表にして長辺の一端縁を、柔軟性を有する円板の表面に、その中心から放射状に接着固定してその自由面を互いに重なり合うようにして砥粒面に段差を形成したことを特徴とする回転研削、研摩板」なる発明が、本件意匠の出願前に公知であったことが認められ、これによれば、研摩布紙片を中心から放射状に接着固定して互いに重なり合うようにして構成した研摩板は公知であったものというべきであるから、このような公知意匠を前提とすると、本件意匠との類否を検討するに当たって、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み等を重視する必要がないということはできない。

(四) 右(一)ないし(三)において判示したところによると、本件意匠と被告各意匠の類否を検討するに当たっては、ホイール基盤の形状とそれが研摩部よりも小径であることのみを取り上げて本件意匠の要部であるとすることは適当ではなく、かえって、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み及び研摩部周縁部の基盤からのはみ出しの度合についてもこれを無視することはできないというべきであるから、本件においては、前記1ないし3判示のとおり環状研摩体部分の与える美感を重視して判断すべきものであり、原告らの前記主張はいずれも採用することができない。

5  以上判示したところによれば、被告各意匠は、本件意匠に類似しないというべきである。

二  被告各物件は、本件考案の技術的範囲に属するか(争点2)

1  「多数の矩形状研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」の要件(構成要件A)について

(一) 右の構成要件の「接線方向で集束繞設されて」なる文言が、具体的に研摩布紙片をどのように配置したものを意味するのかは、文言自体からは必ずしも明確であるとはいえないが、本件実用新案公報(甲一)の考案の詳細な説明欄には、従来技術の説明として、「従来、研摩布紙ホイールとして矩形状研摩布紙片を中心軸孔の外周に垂直状態で多数放射状に集束繞設して環状研摩体と成し、その表裏両面の中心部に嵌リングを当てて接着剤にて一体に結合固定したものなどが一般に知られている。しかるに、この種、従来の研摩布紙ホイールでは環状研摩体を構成している研摩布紙の配列密度が内側ほど大きく、外側になるほど小さくなっていることなどもあって、おのずと研摩の際の押圧強度にバラツキがあり、不均整な圧力抵抗を受けることになり、平滑で精密な安定した表面研摩が望めなく、しかも環状研摩体の外周研摩面の不均等な摩耗を生じると共に不均一な歪を生じて型崩れを生じ耐用度寿命を著しく劣化させるなどの大きな欠点があった。この考案は上記に鑑みなされたもので、以下説明するような研摩布紙ホイールを提供して従来の諸欠点、諸問題を解消するようにしたものである。」と記載されている(本件実用新案公報1欄11行ないし2欄1行)。

そうすると、本件考案にいう「研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」との構成は、右の従来技術にいう「研摩布紙片を中心軸孔の外周に垂直状態で多数放射状に集束繞設して環状研摩体と成」すという構成との対比を示すものであり、右にいう「接線方向」とはホイール基盤の「軸孔」の外周の接線方向をいい、したがって、各研摩布紙片の辺が環状研摩体の底面においてそれぞれ右軸孔の接線の方向を指す構成を意味するものと解するのが相当である。

右のことは、本件実用新案公報の図面においても、その第2図において、環状研摩体の底面における各研摩布紙片の辺が、概ね中心軸孔6aの接線の方向と合致していることからも裏付けられるものというべきである。

(二) そして、被告各物件目録の底面図によれば、被告各物件の環状研摩体を構成する研摩布紙片の辺は、底面においてほぼホイール基盤の軸孔の外周の接線の方向を指していると認められるから、被告各物件は、「研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」との要件を充たすものというべきである。

2  「研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成された」との要件(構成要件A)について

証拠(乙二〇の四、乙二四)及び弁論の全趣旨によれば、研摩性能の向上を図るため、研摩布紙の砥粒を基材に対して直角に接着することは広く用いられている技術であることが認められ、このような研摩布紙を用いて環状研摩体を構成することは、本件考案においても当然の前提とされているとみることができるから、「研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たる」という要件は、研摩布紙を加工面に対して鋭角に傾斜させることを意味するものと解することができる。

被告は、被告各物件の特定について、「各矩形状研摩布紙片2は環状研摩体1の上下の面に対して一定の角度で傾斜している」とすべきである旨主張する(前記第二の二2(二)(1))ところ、被告の右主張を前提としても、被告各物件の研摩布紙片は加工面に対して鋭角に傾斜しているということができるから、右に判示したところによれば、被告各物件の研摩布紙片は「研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成された」との要件を充足するというべきである。

3  「(環状研摩体の)内端面3bに、ファイバー5を介在して……ホイール基盤1を接着剤によって一体結合してなる」との要件(構成要件B)について

(一) 右構成要件にいう「ファイバー」の意義について検討する。

(1) 広辞苑(第四版)によれば、「ファイバー」とは「<1>繊維。細い線状のもの。<2>バルカン・ファイバーの略。」とされている。

(2) 本件出願の願書に添付された明細書(乙三五の一)の考案の詳細な説明欄には、ファイバーについて「例えばバルカナイズドファイバー(絶縁紙)などにて構成されている。」と記載されている(なお、右の記載は、その後の手続補正書(乙三五の五)により「例えばガラスクロスファイバーなどにて構成されている。」と訂正されたが、その理由は明らかではないし、また、「ガラスクロスファイバー」が具体的にどのような性質、形状の材料を指すのかについても明らかとはいえない。)。

(3) 証拠(乙一八、一九、二四、二六、二七、三四)によれば、研摩布紙の業界では、「ファイバー」とはバルカナイズドファイバーを意味するものであり、研摩ディスク等に関する特許公報等においても、右の前提で「ファイバー」なる語が用いられていることが認められる。

(4) 本件実用新案公報の考案の詳細な説明の記載によれば、「ファイバー」の形状についての説明はなく、一定の厚みと形を有することが前提となっているものと解され、さらに、ファイバーを介在させることによる作用効果として、「結合固定が極めて安定強個であると共に、ファイバー5が緩衝機能をもち、常に安定した均一な研摩を行わしめることができる」とされている。

そして、証拠(乙三四)によれば、バルカナイズドファイバーは、機械的強度及び耐衝撃性にすぐれており、また、表面を処理して上で加熱接着すると接着力が大きく安定性のある接着加工ができる素材であることが認められるから、本件実用新案公報の右作用効果は、バルカナイズドファイバーを用いた場合の作用効果が記載されているものと解するのが相当である。

(5) 右に判示したところによれば、本件考案の構成要件にいうファイバーとは、バルカナイズドファイバーを意味するものと解するのが相当であり、被告各物件のネット状の織布は、これに該当しない。

(6) 原告らは、ファイバーとは繊維を意味するから、被告各物件のネット状の織布もファイバーに当たると主張するけれども、右判示のとおり、研摩布紙の業界においては、ファイバーが繊維一般を意味するものと解されているものではないし、考案の詳細な説明によっても、そのように解すべき根拠は見いだせない。

しかも、ネット状の織布をホイール基盤と環状研摩体の間に介在させて接着した場合に、ネット状の織布が、安定した均一な研摩を行わしめるための緩衝機能を有するとは解されないから、本件考案においてファイバーが有すべき作用効果を発揮するものでもない。

したがって、原告らの右主張は採用することができない。

(二) 右(一)によれば、被告各物件は、本件考案の構成要件Bにいう「ファイバー」を備えていないというべきである。

4  まとめ

したがって、被告各物件は、本件考案の構成要件Bを充足しないから、本件考案の技術的範囲に属さない。

第四  総括

以上判示したところによれば、原告らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)

イ号物件目録

一 イ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

また、ホイール基盤4より小径なる補強盤7をホイール基盤4の外面に接着剤にて接着固定し、ネット状の織布5の内面中央部に軸孔3を有する座板8を接着剤にて接着固定している。

イ号物件(写真)

<省略>

イ号物件の図面

<省略>

ロ号物件目録

一 ロ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

また、ホイール基盤4より小径なる補強盤7をホイール基盤4の外面に接着剤にて接着固定し、ネット状の織布5の内面中央部に軸孔3を有する座板8を接着剤にて接着固定している。

ロ号物件(写真)

<省略>

ロ号物件の図面

<省略>

ハ号物件目録

一 ハ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

ハ号物件(写真)

<省略>

ハ号物件の図面

<省略>

ニ号物件目録

一 ニ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

また、ホイール基盤4より小径なる補強盤7をホイール基盤4の外面に接着剤にて接着固定し、ネット状の織布5の内面中央部に軸孔3を有する座板8を接着剤にて接着固定している。

ニ号物件(写真)

<省略>

ニ号物件の図面

<省略>

ホ号物件目録

一 ホ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

また、ホイール基盤4より小径なる補強盤7をホイール基盤4の外面に接着剤にて接着固定し、ネット状の織布5の内面中央部に軸孔3を有する座板8を接着剤にて接着固定している。

ホ号物件(写真)

<省略>

ホ号物件の図面

<省略>

ヘ号物件目録

一 ヘ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

また、ホイール基盤4より小径なる補強盤7をホイール基盤4の外面に接着剤にて接着固定している。

ヘ号物件(写真)

<省略>

ヘ号物件の図面

<省略>

ト号物件目録

一 ト号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。

二 図面において、1は多数の矩形状研摩布紙片2がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成した環状研摩体である。

そして、環状研摩体1を、該環状研摩体1より小径にして中央部を膨出形成すると共に該中央部に軸孔3を貫設したバルカナイズドファイバーからなるホイール基盤4の内面に、該ホイール基盤4とほぼ同形のネット状の織布5を介して接着剤6にて環状研摩体1の外周縁側を残して接着固定している。

ト号物件(写真)

<省略>

ト号物件の図面

<省略>

日本国特許庁

昭和02年(1987)3月31日発行 意匠公報(S)

701898 意願 昭和57-22877 出願 昭和57(1982)5月24日

登録 昭和61(1986)12月23日

創作者 植松義則 豊明市三崎町社8番地3

意匠権者 植松義則 豊明市三崎町社8番地3

代理人 弁理士 大矢須和夫

官  原英

意匠に係る物品 研摩布紙ホイール

この意匠は図面代用写真によって わされたものであるから細部については原本を参照されたい

<省略>

<省略>

< >日本国特許庁(JP) < >実用新案出願公告

< >実用新案公報(Y2) 昭63-4608

< >Int.Cl.4B 24 D 13/16 13/06 識別記号 庁内整理番号 6526-3C 6826-3C <24><44>公告 昭和63年(1988)2月5日

< >考案の名称 研摩布紙ホイール

< >実願 昭和57-70922 < >公開 昭58-173463

< >出願 昭57(1982)5月14日 < >昭58(1983)11月19日

< >考案者 植松義則 愛知県豊明市三崎町社八番地三

< >出願人 植松義則 愛知県豊明市三崎町社八番地三

< >代理人 弁理士 大矢須和夫

官 後 正彦

< >参考文献 実開 昭和47-11633(JP、U)

<57>実用新案登録請求の範囲

多数の矩形状研摩布紙片4が夫々傾斜して接線方向で集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成された環状研摩体3の外周縁側を残した内端面3bに、フアイバー5を介在して軸孔2を有するホイール基盤1を接着剤によって一体結合してなる研摩布紙ホイール.

考案の詳細な説明

この考案は研摩布紙ホイールの改良に関するものでおる.

従来、研摩布紙ホイールとして矩形状研摩布紙片を中心軸孔の外周に垂直状態で多数放射状に集束繞設して環状研摩体と成し、その  両面の中心部に リングを当てて接着剤にて一件に結合固定したものなどが一般に知られている.

しかるに、この 、従来の研摩布紙ホイールでは環状研摩体を構成している研摩布紙の 列密度が内側ほど大さく、外側になるほど小さくなつていることなどもあつて、おのずと研摩の の押圧強度にバラツキがあり、不均 な圧力抵抗を受けることになり、平滑で精密な安定した表面研摩が っなく、しかも環状研摩体の外周研摩面の不均 な摩耗を生じると共に不均一な歪を生じて型 れを生じ 用度寿命を しく劣化させるなどの大をな欠点があつた.

この考案は上記に みなされたもので、以下説明するような研摩布紙ホイールを提供して従来の諸欠点、諸問題を解消するようにしたものである。

この考案の研摩布紙ホイールを図面実施例について説明すると、1は軸孔2を有する膨出部1aが中央部に形成されたホイール基盤で後記の環状研摩体3より小径となつている.また5は該ホイール基盤1の内面に適合するほぼ同形のフアイバーで、中央に上記軸孔2と適合する中心孔5aを有し、例えばガラスクロスフアイバーなどにて構成されている.そこで先ず多数の矩形状研摩布紙片4が夫々傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように成した環状研摩体3を構成する.なお3aは該環状研摩体3の外端面、3bは同内端面、3cは同外周面、3dは同内周面である.そして該環状研摩体3の内端面3bを接着剤7によつて 記フアイバー5の内面に接着固定すると にフアイバー5の内面中央部に中心孔5aと孔6aとを合致せしって圧板6を接着剤7によつて一体に接着固定する.しかして上記環状研摩体3及び圧板6を接着固定したフアイバー5を、その中心孔5aを軸孔2と台致せしって前記ホイール基盤1の内面に接着剤8によつて一体結合するものでおる.即ちこの考案は、多数の矩形状研摩布紙片4が夫々傾斜して接線方向に集束繞設された環状研摩体3の外周縁側を残した内端面3bに、フアイバー5を介 して軸孔2を有するホイール基盤1を接着剤によって一体結合してなるものである.

以上のように構成されたこの考案の研摩布紙ホイールはデイスクグラインダーに着装して環状研摩体3の外端面3aまたは外周面3cを研摩面として金属表面などの研摩作業を行うものである.

この考案の研摩布紙ホイールでは、ホイール基盤1に一体結合された環状研摩体3が、多数の矩形状研摩布紙片4を夫々傾斜して接線方向に集束繞設させた構成としておるから、各研摩布紙片4が隣接同士傾斜状に重なり合つて相互に補強し合つて各研摩布紙片4自体の接が強大となり、不均 な歪を生じたり、型 れを生じたりしなく、かつ局部的に過度な摩耗を生じなく長期に亘つて安定使用でき寿命を著しく向上できると共に研摩の の押圧強度も均整で平滑な高精度の表面研摩が安定的に行えるなどの  した効果がある.

そして特にこの考案の特徴とする所は、上記環状研摩体3を構成している多数の各研摩布紙片4が、夫々適宜角度を傾斜して集束繞設され研摩面の砥粒が金属加工面に対して鋭角に当たるように構成された点で、このために研摩時に、傾斜状基材布紙に結合保持されている砥粒に作用する力は、そのベクトルが該砥粒を基材布紙に押え付ける きをし、砥粒を保持している結合剤の力を助 増大せしめ、 い刃先の自生を促し、 に安定した優れた研摩、研削能力並びに研摩精度を発揮できると共に耐用寿命が著しく増大できるなどの基大な効果がある.

またこの考案では、研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるため、研摩作業開始後、直ちに各研摩布紙4ごとに砥粒が脱落した帯 がそれぞれ研摩面砥粒部に接して形成され、この砥粒脱落の布紙帯 が、砥粒と結合剤との間におる切り の げ となる規模の大きい一種の気孔の投目を果たして切り を内外方に円滑に 出せしめるもので、従来の砥石や研摩デイスクのように切り の目づまり現象が生じなく、加工物に熱をもたせないし、さらに加うるに環状研摩体3も、個別の各研摩布紙片4が、集束されてなるため、熱伝導による熱の伝わりが小さく放熱効果がよいもので、加工物ともども熱をもたないため、加工物の表面に研削燒けや研削割れなど目つぶれを生ぜしめないなどの優れた効果がある.

それにホイール基盤1は、環状研摩体3の外周線側を残した内端面3bに、フアイバー5を介在して接着固定されており、デイスクグラインダーに着装して研摩作業を行う 、上記環状研摩体3の回転により、その外周線側における各研摩布紙片4の各隣接空間部を夫々通過する旋回空気流が誘起され、該空気流が被研摩金属表面を冷却して摩擦加熱を防止する著大な効果がある.

また環状研摩体3は上記のように接が強く研摩有効厚みが大でおるから、その厚みがごく薄くなるまで長期に亘つて安定使用できるという優れた効果がおる.さらにまた環状研摩体3は、フアイバー5を介在して接着剤によつてホイール基盤1に結合固定されているから、結合固定がきわめて安定強固ででおると共にフアイバー5が  機能をもち、常に安定した均一な研摩を行わしめることができるなどの効果がある.

図面の簡単な説明

図面はこの考案研摩布ホイールの実施例を示すもので、第1図は環断面図、第2図は平面図、第3図は斜視図である.

1……ホイール基盤、1a……膨出部、2……軸孔、3……環状研摩体、3a……外端面、3b……内端面、3c……外周面、3d……内周面、4……研摩布紙片、5……フアイバー、5a……中心孔、6……圧板、6a……孔、7.8……接着剤.

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

意匠公報

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実用新案公報

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